Communication Center for Food and Health Science/特定非営利活動法人食品保健科学情報交流協議会
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電力事情の悪化に対する取組みについて
2012年6月

 食品衛生への取り組みについて (提案 その5)

消費者・食品事業者の皆様へ
節電をしても、停電になっても、食中毒菌は休まない

平成24年6月 
NPO法人食品保健科学情報交流協議会 

 福島第1原子力発電所の爆発事故は、その関連により電力事情に大きな影響を及ぼし、東北・関東のみならず全国的な電力事情の悪化を招きました。事故発生から1年を経て、原発の再稼働のあり方の行方によっては電力不足になることが確実とされています。

今年の夏においても、生活の全般にわたる節電の要請がされました。電力事情はさらに悪化し、計画停電や突然の停電の可能性があります。さらに、この状況が数年にわたり継続することも想定し、万全な食品安全確保へ対応しなければなりません。

 家庭や食品事業所における食の安全の防衛策を再確認し、電力事情の悪化により、調理・製造加工過程や保存中の食品の微生物を増加させ食中毒の原因となる可能性を防止しなければなりません。

電力事情の悪化はこれまで日常的にできていたことがいろいろな制約を受け、

困難な事態になることが考えられ、特に食生活・食品取り扱いにおいては食中毒に直結する可能性が大であることが考えられます。

例えば、低温管理が必要となる食品を大量に買い置き保管する場合は、食品の表示に示された保存方法を守れない状況が起こり得ます。停電で冷蔵庫・冷凍庫(以下「冷蔵庫等」という。)の管理が困難になるのは当然のことです。

また、家庭では食品の調理加工には冷蔵庫等だけでなく、電化調理器具は数多く使用されています。調理中の停電は、加熱不十分による殺菌不足を招き、すぐ冷却できないことによる食中毒菌の増殖の恐れもあります。

このため、次のような内容の提案が各方面から出されています。

・賞味期限等が包装を開くまでのものであることを再認識し、食品の購入にあたっては、開封後の食品を冷蔵不備な状態で保存することがないように計画的に、使いきりの物を購入することなどの対応をすること。

 * 無原則的に発生する停電や変更の多い計画停電にあらかじめ対応

・冷蔵庫等の使用時の停電・電力低下への対応例として、冷蔵庫等の開閉を極力制限する、また、蓄冷剤(保冷剤)と発泡スチロール容器の併用などは一時的に効果がある。

 

 電力事情の悪化が食生活を直撃し、食中毒に直結する可能性があることから、「食中毒予防の3原則」を再確認し、電力に頼ることが多い現代の食生活・食品取り扱いから食中毒を発生させない工夫が求められます。再確認には、厚生労働省の提唱する「家庭でできる食中毒予防のための6つのポイント(以下「6つのポイント」という。)(別添 参考資料1参照)を理解し、実践することが効果的であると考えます。

「家庭でできる」とのタイトルであるが、食中毒予防の基本的な考え方が示されており、飲食店や菓子・そうざい等の食品製造事業全体にも求められる予防のポイントでもあります。

以上のことを踏まえて、提案の第5回として、電力事情の悪い中においても細菌やウイルスによる食中毒を起こさないように、現状における予防的な対応として、下記のとおり提案いたします。

1、細菌性食中毒を知ろう

1)家庭における食中毒が多いこと

    平成23年の厚生労働省の統計では、食中毒の発生件数1062件のうち、家庭を原因とするものは88件でした。しかし、統計上現れない潜在する件数は極めて多いものと推定されております。食中毒事件として計上されない、「食中毒の疑い」・「食あたり」・「有症苦情」として処理された件数も家庭によるものが多いといわれております。

また、原因施設別にみると、平成23年度の統計では、食中毒発生件数に対し食品事業所によるものは約80%を占めています。その中でも飲食店など中小の事業所の割合が高いとされております。

 

2)細菌性食中毒はどのように起こるのか

  平成23年の厚生労働省の統計では、食中毒の発生件数1062件のうち、細菌及びウイルスを原因とするものは845件で79.6%でした。このように、細菌性食中毒が食中毒事件数に対し極めて高い割合を占めております。

   細菌の生育には、栄養・水分・温度が重要な要素となります。発酵食品等を作る有用な細菌も食中毒を起こす有害な細菌も同じような条件で生育をします。食中毒の原因となる細菌・ウイルス(以下(細菌等)という。)が食品に付着して、栄養・水分・温度の条件がそろうとこれを食べた人の食中毒を起こす可能性が高くなります。すなわち、食中毒の原因となる細菌等は「節電をしても、停電となっても、食中毒菌は休まない」ことを認識することが大切です。

 

(3) 食中毒はどのように防ぐのか

一般的に食品には栄養分や水分が含まれております。食品の保存技術は、この水分に注目したもの、添加物の利用などもありますが、温度に注目し細菌が生育しにくい温度帯である「高温又は低温」において保存する温蔵や冷蔵・冷凍が広く利用されております。長期保存のためには冷蔵・冷凍が広く使われ有効です。また、「菌が付いた」食中毒発生の可能性のある細菌等を確実に「菌を減らす」ことも重要です。

これらの予防方法の中で、特に電力事情に影響されるのは、冷凍・冷蔵です。

 

(4) 細菌による食中毒を対象とした食中毒予防の3原則とは、

  @ 食中毒の予防の3原則とは、食中毒菌を「菌を付けない」・「菌を増やさない」・「菌を減らす」ことです。即ち、菌を付けないように努力し、菌がついても増やさないように努力し、菌が食品中に付いたままになる可能性を無くするために、菌を減らします。

 ・菌を付けないとは、食中毒菌が付かなければ食中毒は発生しません。この菌を付けないように清潔に保つことは重要です。そのためには、調理場などに食中毒菌を持ち込まないようにすることです。

 ・菌を増やさないとは、食品に付いてしまった食中毒菌を増やさないために、洗浄等の前処理を行うとともに、食品の低温管理や高温で保持することです。

 ・菌を減らすとは、食品に付いた食中毒菌を減らすことで、加熱することや薬剤による殺菌等です。なお、加熱しただけでは死滅しない芽胞菌と呼ばれるものもあります。

A これと同様な衛生的取り扱いに「清潔」・「迅速」・「加熱又は冷却」を食品衛生の3原則とする考え方もあります。

   ・清潔とは、食中毒菌を食品に付けないための良い環境や手洗いをすることです。

   ・迅速とは、食品に付いてしまった食中毒菌を増やさないため食品を低温管理したり、迅速に処理し、また、調理した食品は細菌が増殖する前の早めに食べるか、冷蔵庫等に保存することです。

   ・冷却又は加熱とは、食品についてしまった食中毒菌を増やさないための低温管理をすることで、加熱とは菌を減らす加熱殺菌をすること及び菌を増やさないための高温管理をすることです。

  B 「食中毒予防の3原則」・「食品衛生の3原則」は食中毒予防をするために重要な役割を果たしています。これらの趣旨は同じことで、この考え方を基に食中毒を予防することができます。

   菌が付かないように清潔にし、菌が増えないように迅速に処理し、冷却をし、菌を減らするために加熱等することです。

    これらの対応のうちで電力事情の悪化が直接的に影響する加熱や冷却への対応方法について検討してまいります。

 

2、電力事情の悪化の影響は

  細菌性食中毒の発生の仕方やその予防方法を昨年の事例から考えて、食の安全に及ぼ

す電力事情の悪化(節電、停電の日常化)がどうであったのか確認しますと、次のよう

な事態を招くことが分かりました。

  ・原材料、調理済み食品の保管の温度(低温・高温)管理が困難

  ・適切な加熱・冷却を行うことが困難

  ・空調・換気の停止による室温の上昇

  ・上記の事態が、食品の生産から消費に至るすべての段階に影響

 (1)冷蔵庫等への食品保管の悪影響

   @ 停電により電源が切断した場合に、冷蔵庫等の庫内温度は外気の影響により上昇することはよく知られていることです。

   A 電源が切れた状態では、ドアの開閉がなければ、食品の品温により庫内温度を一時的に保つことができますが、長時間を経過すれば品温も上昇します。

   B ドアの開閉があれば、暖かい空気が入りますが、食品の品温により上昇した庫内温度は低下しますが、このために品温は上昇します。

   C 上記@〜Bの裏付けとなるデータは、別添資料2「冷蔵庫・冷凍庫の停電時における影響調査」を参照してください。

 

 (2)電磁調理器等の加熱不足による殺菌への悪影響

   @ 食品の加熱殺菌は、温度だけでなく、菌が死滅・減少する一定温度以上の熱を一定時間以上食品に加えることにより効果がありますが、途中で電源が切れると十分に殺菌されているか確認できないこととなります。

   A これは、電磁調理器でも、電子レンジその他の加熱機器についても同じことで、

    飲食店の調理済み食品の加熱保管庫の電気が切れると、庫内温度は常温近くに戻り、付いた菌を増やすことになります。

 

 (3)見過ごしやすい悪影響

   @ 夏季における電力事情の悪化は、冷房や換気不良による調理場等の温度上昇が考えられ、細菌の増え易い状態になり易くなります。

   A 外出などで、停電に気が付かなかった場合に、電気が回復していると、例えば冷凍食品が解凍され再凍結していても気が付かないことがあります。

 

3、電力事情の悪影響にどのように対応するのか

食中毒を予防するための3原則は食中毒菌を「菌を付けない・菌を増やさない・菌を減らす」に注目した予防法として、厚生労働省が提案した6つのポイントがある。ここには具体的にどうすればよいのか、提案されています。よく読めば、「当り前のことを当り前に行う」と書かれていますが、この提案に述べられている要点に従えば、家庭や食品事業所で起こる食中毒はかなり防ぐことができます。

夏季の食中毒が増える季節に向けて、計画停電が実施された場合には、冷蔵・冷凍設備が正常に作動しなくなるなど、食品等の管理が適切に行えなくなる恐れがあります。

そこで、6つのポイントから、特に温度管理(菌を増やさない・菌を減らす等電力事情の悪化が影響する項目を「6つのポイント」を参考に考えてみました。

(1)   6つのポイントとは、

家庭における食中毒や食中毒を疑う事例が多くを占め、その中でも細菌によるものがほとんどあることに着目して、厚生労働省が宇宙食から生まれた食品の衛生管理であるHACCPの考え方を取り入れまとめたものです。(別添資料1)

  6つのポイントの構成  ポイント1 食品の購入   (原材料の仕入れ)

               ポイント2 家庭での保存  (原材料の保管管理)

               ポイント3 下準備     (前処理・仕掛品))

               ポイント4 調理      (調理・加工・製造)

               ポイント5 食事      (提供・販売・出荷)

               ポイント6 残った食品   (翌日販売品・保管品)

   カッコ内の記載事項は、6つのポイントを食品事業者が実施するために当てはめた場合のポイントを示すもので、基本は家庭におけるものと同じで、応用できます。

 

(2)   電力事情の悪化による節電・計画停電に対応する方法の検討

電力事情の影響により不適切な節電等により温度管理ができなくなることに対するが基本的な対応であるとして、6つのポイントを以下のとおり整理しました。

 

3)ポイント1 食品の購入(買物・仕入れをする時)

    食品を適切に持ち帰り、直ちに保管することが重要であり、買い物の時から実施することです。そのためには、食品表示に記載されている保存方法に注目することです。賞味期限・消費期限は、表示されている保存方法に従って食品を保存した場合に、その期限を保証するものです。

@    店舗や仕入れ先では、適正な温度と保管方法が守られていることを確認すること。この状態で購入した食品を自宅に持ち帰るために次の注意が必要です。 

・肉や魚などは一回の調理に必要な量を購入し、必要な物以外は購入しないこと

・要冷凍・冷蔵食品は、買い物の最後に購入すること

・保冷用エコバックを持参し、長時間移動の際は発泡スチロールで保冷すること

・買い物袋に入れる際に、冷凍・冷蔵食品ごとにまとめ持ちかえること

A    食品をなるべく短時間で適切な管理ができるように、お出かけの際の買い物は最後に行い、なるべく早く自宅に帰ること

 

(4)    ポイント2 食品を保存する時は

食品に表示されている保存方法に従い適切に保存すること。消費期限・賞味期限を確実に保証されるための方法です。

また、冷凍に適した食品と適しない食品があることを理解すること

@    帰宅したらすぐに、予め決めてある冷蔵庫内の位置に食品を格納する。

A    一回の調理に必要な量を分割して保存し、必要なものはまとめて取り出すことにより扉の開閉数を削減する。

B    熱いものは必要な量ごとに小分けし、十分冷めてから保存する。

C    ドアを開けた時、冷蔵庫等の冷気が流れ温度が下がらないようカーテン等をすることや庫内で発泡スチロールの箱に食品を入れると、冷気が逃げるのを最小限にすることができる。

 

(5)    ポイント3 下準備の時は

    冷凍食品の解凍は、できるだけ電子レンジを使用しない工夫をすること。

@    一回の調理に必要な量を、計画的に冷蔵庫内で解凍することにより冷凍食品の品質低下を防ぎ、低温で電力消費が少なくなる。(節電効果が上がる。)

A    解凍を急ぐ時は流水で解凍する。(室温での解凍はしないこと)

 

(6)    ポイント4 調理の時は

加熱する場合は、中心まで十分に熱が通るように工夫すること。例えば、肉や魚は煮込む方が効果的に加熱することができる。

@    電子レンジよりもガスの利用を推進する。また、電子レンジを使用する場合には時々かき混ぜて、加熱して温度ムラをなくすことが必要です。

A    食品等は冷蔵庫では冷やされているので保存容器から移し替えて、加熱すること。

 

(7)    ポイント5 食事の時は

食事のときはバラバラではなく家族みんなで食事をすることにより、冷蔵庫等の開閉回数も、料理の加熱回数も減る。

 

(8)    ポイント6 食品が残った時は 

成るべく残らないように調理し、残った場合には一回に必要な量を小分け保存する。

冷蔵庫等を効果的に使用するために、長く保存をしないで早めに使い切ること。

 

(9)    自己採点をしてみましょう

具体的に6つのポイントを実践できたのか、家族で点検票を作成して自己採点することも、節電や停電への対応となります。

千葉県で作成した点検票の例を別添資料3を参考にしてみてください。

 

4 停電になると冷蔵庫等はどうなるのか

  別添資料2の「冷蔵庫・冷凍庫の停電時における影響調査(東京サラヤ実験室)」結果等により検討しました。この調査結果を考察すると、従来から常識とされていた冷蔵庫等への外気の影響を実験的に確認できました。

(1)  電源を切ってからの時間経過を考えると食品を格納した場合は、食品の品温により庫内温度を保つ効果があるといえること。

(2)  電源を入れてからの時間経過では、食品温の効果により、短時間で設定温度に戻ることが確認されたこと。

(3)  電源を入れてからの時間経過で、50%格納の方が100%格納より早く設定温度に戻ったことは、庫内空気の撹拌が効果的であったと推察できること。

(4)  これらのことから、季節により異なると考えられるが、2時間程度の停電であれば、開閉しないことを条件に、ある程度品温への影響を少なくできること。

(5)  冷蔵庫への食品の格納は、十分に隙間があること、また、冷凍庫への食品の格納は多い方が外気の影響が少ないといえること。

 

5 節電・計画停電時の冷蔵庫等の温度管理

  電力事情の悪化に対応し、食品の安全を継続的に確保するためには、冷蔵庫等を効果的に利用することが大切です。

  冷蔵品や冷凍品は、買い物途中や自宅での停電などにより温度が上昇しても、その後

冷蔵や冷凍されると温度の上昇した事実が分からないことがあります。電気が来ない状

況であっても、次のような食品の温度が上昇しないように工夫することが大切です。

 (1)日常の対応

@    冷蔵庫等の冷風口は食品等でふさがずに、効率よく冷却すること。

A    冷蔵庫等の上に物を置かないこと、壁との隙間を開けることは。

B    冷蔵庫は、7割ぐらい目安で食材を保存する

C    冷凍庫は、なるべく食材や保冷剤又は氷で庫内をうめる。

D    節電対策として凍結された保冷剤や氷を冷蔵庫の隙間に入れることにより、低温を保持することができる。(これを繰り返す。)

E     庫内に温度計を入れておきましょう。(停電時における温度確認)

2)停電の間の対応

@ 冷凍庫等は停電時に開閉しない。(冷気を逃がさない事が大切)

A 冷凍庫の格納の隙間で、常に氷を作り置き、電気が切れた時に冷蔵庫に移すことにより、庫内温度の上昇を防ぐことができる。

3)停電終了時の対応

@    温度計で庫内の温度を確認し、保存温度が適正であるか確認する。

A    6つのポイント「食品が残ったとき」に従うことを原則として、保存温度が平常時の庫内温度より極端に上昇していない場合は、早めに調理する。

 

6 停電時における基本的事項の再確認

  停電時における食品安全を守るための基本的な注意は、食中毒の原因となる細菌等は条件さえ整えば「節電をしても、停電になっても、食中毒菌は休まない」ということです。このために、停電であるという理由で、調理や食品の加工・製造に妥協は許されず、基本的対応に徹底することです。

 物作りは「当たり前のことを、当たり前にやって、当たり前のものを作る。」とよく言われます。家庭の台所や食の製造加工現場においては、節電等においてもこの食品安全の基本的なフレーズを念頭に「レシピやマニュアルに従い、定められた作業手順どおりに行えば、いつもの安全なものができる。」ことになります。つまり、どのような状況においても、細菌から身を守る基本的事項を確実に守ることが安全な食品を作ることができることを改めて確認して頂くことです。

 

以上

 

別添資料

 

1、家庭でできる食中毒予防のための6つのポイント(厚生労働省資料)

 

2、冷蔵庫・冷凍庫の停電時における影響調査 (東京サラヤ()資料)

 

3、6つのポイント 25項目について、自分で確認してみましょう

                      (千葉県健康福祉部資料)

                                           

食科協では、この問題について、提案を継続することとしております。
本件に関するご意見・ご質問等は、Fax又はE-mailによりお願いします。

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