創立10周年から次への新たな一歩を

食科協理事長  関澤 純

食科協は創立10周年を迎えました

2014年あけましておめでとうございます。昨年は、食科協にとり大きな節目となる創立10周年を記念しました。食科協は、2003年6月に第1回通常総会を開催し、昨年10周年を迎えました。これは,ひとえに食科協を立ち上げ、支え、発展させてくださった、会員、役員、関係省庁や関係諸団体の皆様のご指導、ご協力の賜物と深く感謝いたします。昨年6月20日には、銀座ブロッサム中央会館で、記念式典を開催し、厚生労働省滝本浩司監視安全課長よりご祝辞を頂き、林裕造会長の挨拶、伊藤蓮太郎顧問による設立経緯の説明を致しました。記念講演会では熊谷進食品安全委員会委員長から「わが国の食の安全のシンポと課題―食品安全委員会の役割」というご講演をいただきました。また事務所のご提供ほかのご支援を頂いている全国製麺協同組合連合会様に感謝状を贈呈し、最後にこれからの10年に向けたコミットメント(後掲)を発表し、また10周年記念誌にこの間の活動成果をまとめ公表しました。

食品安全この10年の歩み

 振り返りますと、この10年はわが国の食品安全において重要な新たな1歩を踏み出した時期といえます。それまでにわが国の食品安全システムはかつての食品安全に関わる違反等の事件や食中毒事故などの教訓に学び、悲惨な事例を繰り返さない仕組みを作りあげ、安全性評価手法は国際的な進歩に学び、逐次推進してきた行政と食品業界でしたが、どちらかというと後追いの感を免れない面がありました。ところが2001年にBSE汚染リスクを軽視した行政対応の失敗、このこととも関連した牛肉の表示偽装、その少し前の2000年には「総合衛生管理製造過程」の承認を取得した大手乳業メーカーの衛生管理不備による大量食中毒事件発生などがおきました。これらを深刻に受けとめ、科学的なリスクアナリシスに基礎をおくことを明確にした食品安全基本法の制定と食品安全委員会の発足、食品衛生法の大改正があり、リスク管理部門である厚生労働省内での安全性評価を、明確な科学的根拠と手法を基礎に食品安全委員会が独立的に実施する大きな変革がありました。同時に、評価のプロセスと、安全管理の計画から事後の評価に至るまでを公開し、消費者、生産者、食品関連企業、行政、専門家らがともに参加し、理解を共有するリスクコミュニケーションを食品安全確保の必須要件として組み込むことになりました。

 最近では、消費者問題への対応を担う消費者庁が設置され、新たに食品表示法を制定し食品表示システムの再構築を図っています。

食科協における取組

 食科協は、これらと軌を一にして先進的に、食品安全の科学的情報を学び共有し、関係者間のコミュニケーションを通して建設的な方策を協議する機会の実現を目指して発足しました。この10年間には、事業者のコンプライアンスとも関連する偽装表示事件、輸入食品における意図的な毒物混入事故、「いわゆる事故米」流通問題などがあり、農薬残留規制では「ポジティブリスト制度」導入に伴う極微量の基準違反の大々的報道、「いわゆる健康食品」の氾濫、新たな食形態である牛肉の生食による食中毒死亡事故、原発事故による大規模な放射性物質汚染など、かつて見られなかった多くの問題が次々に生じ、国民の食の安全への不安を掻き立ててきました。

 食科協は微力ながら、これら折々の緊急テーマだけでなく、食品の安全確保に関わる基礎的な課題について、食品保健に係る情報提供(毎月1回のニュースレター発行)、時々の問題や食品保健学術に関する公開講演会や研修会の年2回以上の開催、調査研究の実施、リスクコミュニケーションの実践活動、役員の国や都などの公的な委員会への参画などを進めてきました。独自の取組として、食品マネジメントシステム構築ガイドの出版、食の安全ナビ検定クイズによるリスクコミュニケーション支援、電力事情悪化状況への衛生対応の提言、新食品表示法などにかかるパブリックコメント提出と提言公表、食品安全の国際動向への対応の検討と近隣諸国関係者との協力などを重ねてきています。

幅広い協力関係の構築を基礎にさらなる次への展開を

 食科協は今後も利害関係からは独立し、食品安全に関心を持ち、このことに関わる多様な関係者間の交流の場を提供し、食品保健に係わる情報提供を行い、勉強会の研究成果を基礎に関係者への建設的な提言を行ってゆきたく思います。次の新たな10年への今後の取組として、後掲の食科協コミットメントを掲げ、可能なところから一歩一歩進めて参りたく、皆様のさらなるご支援とご協力をお願いいたします。このことに関連して、毎月定例の常任理事会に加えて、運営委員会を開催し、理事以外の運営委員も加わり幅広い議論を行い、講演会の開催では、一般財団法人日本科学技術連盟様、一般財団法人日本冷凍食品検査協会様のご支援、ご後援を受けて開催できるようになりました。昨年1年間の活動の一部をご紹介しますと、創立10周年記念式典のほかに、新食品表示のあり方と規制の仕組みについて、食品リスク評価とその結果の意味することなどについて勉強会を開催するとともに、国際的には国立台湾大学の食品安全教育研究センターの協力により食品安全ナビ検定クイズの中国語翻訳を進め、国際的な利用を推進しています。今年は現在計画中ですが、食中毒発生防止のためノロウイルス対策を中心とする新たな取り組みのほか、新食品表示法の表示基準具体化、「いわゆる健康食品」の規制緩和、食品のグローバル流通に関わる規制や試験法の調和への対応、放射性汚染への国民の不安の解決などあり、消費者、事業者、行政の直面する食品安全と国民の健康を守る課題は山積みです。私たちは、現実をよく見、聞いた上で、考え、情報を共有するだけのリスクコミュニケーションに留まらず、国際的な視野を持ち、問題の把握と解決策の提示、方針の選択と実施での関係者間の適切な連携を重視する新たなリスクガバナンス構築の取り組みを、着実に進めてゆきたく思います。

食科協のコミットメント(2013年6月公表)

1.情報発信の改善と充実: ニュースレターやホームページの充実と読みやすさなどの改善を図り、情報交換の活性化を図る  

2.勉強会での独自テーマの追及や、系統的な開催などへの改善: 食科協の独自性を重視した問題の掘り下げや、シリーズ開催を検討する 

3.外部への意見発信と提言: ホームページでの意見発信やパブリックコメントに対応した建設的提言を目指す

4.組織の強化・会員数の拡大: NPO食科協の趣旨に賛同する方の入会を歓迎するとともに、遠隔地との交流も図り、地域的な活動範囲の拡大を図る

5.調査・研究活動の強化: 作業部会の活性化と関係者間の連絡強化を図り、食の安全ナビ検定クイズなどの一層の活用を図る

6.国内外の関連団体との交流や情報交換による連携と協力の拡大: 広範囲の食品安全関係者や専門家、報道関係者や国内外の関係諸団体と連携および協力の拡大を図る