栄養表示基準改定についてパブリックコメントの提出

食科協理事長  関澤 純

意見概要

栄養成分表示の目的は、国民の健康維持と増進にあり、消費者が表示内容の意味を適切に理解し、事業者は責任をもって正確な表示を実行できることを目指すべきと考え、提案をする。
(1)消費者庁は「表示値は栄養成分摂取のおよその参考値」と明確に説明し、消費者が適切に表示の意味を理解し、およその摂取量を知り健康管理を進められるよう、社会教育システムの整備や公的なデータベースの提供などを行い、消費者と事業者を支援することを明確に示す。
(2)栄養表示基準は「理解しやすいような用語により正確に記載する」という規定に反する「誤差の許容範囲」という不正確で誤解を誘導する用語を改め、「幅の範囲」とする。許容する幅の適用にあたっては、表示値を基準として、分析値の範囲を示すものとする。
(3)製造者や販売者が、設定根拠を示し合理的な推定方法に基づき表示を実施できることを具体的に記す。
(4)低含有量の栄養成分表示では、前記の目的に沿い過度に厳密さを追求しないように改めるが、ゼロという表示ではなく、一定量以下と明確に表示する。
(5)ナトリウムの過剰摂取による高血圧や高塩分濃度と胃癌の関係などが指摘され、高塩分濃度の食事や食塩の一日摂取量の制限として健康指導がされているが、消費者にとり理解しやすい食塩換算表示を推奨すべきである。
(6)栄養成分の強調表示については別途考えるべきで、本提案は適用しないものとする。

 意見本文

栄養成分表示は国民の健康管理に資する一手段として重要であり、貴課はじめ一部改正の検討に関わられた関係者のご努力に謝意を表し、本改正により適切に冒頭の目的を達成しうることを願う。本提案は、この目的に沿うNPO法人食品保健科学情報交流協議会の検討に基づくもので、ご査収いただき、もし内容についてご不明の点があれば、理事長の関澤の文責によるものなので、直接お尋ねまたご確認頂きたい。

(1)栄養成分表示改定の目的と実施上の考慮について
意見:栄養表示は、食品摂取による健康の維持や増進の目的のため、参考とされ、加工食品についてより広く表示されることが望ましい。本改定にあたっては「表示値は栄養成分摂取のおよその参考値である」と明確に説明し、消費者が、適切に表示の意味を理解し、およその摂取量を知り健康管理を進められることが重要である。このため「消費者庁は、社会教育システムの整備やデータベースの提供などを行い、消費者と事業者を支援すべき」ことを明示すべきである。消費者庁に表示の監視指導体制がなく、自治体に多くの労力を割かせ表示違反を摘発することが目的となるべきではない。

修正案:改定の説明にあたり、合理的な推定の表現例としては「表示値は栄養成分摂取のおよその参考値であり、設定根拠として、(別表第二第三欄に掲げる分析法による分析、公的データベースの利用、同一レシピサンプルの分析値の参照)の結果を用いた」などとする(ただしカッコ内下線部分は、実際に適用した方法を選択して示す)。このために消費者庁は、社会教育システムの整備やデータベースの提供などにより、消費者と事業者の理解の支援に努めることを明確に記す。

(2)誤差の許容範囲という考え方および、その適用について
意見:加工食品の特性から、組成や原材料成分の季節や原産地ごとの変動、製造後の経時変化などによる栄養成分のばらつきが相当ありうる。栄養成分のバラつきは、真の値の幅の広がりであり、真の値に対する誤差とは言えない。不適切に誤差という用語を用いれば、消費者の誤解を誘導するだけでなく、事業者のコンプライアンスに不都合が生ずる。第3条 1項の「食品を一般に購入し、又は使用する者が読みやすく、理解しやすいような用語により正確に記載すること」という規定にも反し、下記修正を求める。
「表示基準一部改正の概要」のグラフでは、実測値を基準として横軸にとり、これに対して表示値の許容範囲を示すようになっている。しかしこれは既知の数値である表示値を基準として、分析により初めて知られる実測値の幅を許容範囲として示すべきであろう
修正案:第3条6項1号 「誤差の許容範囲」は、「幅の範囲」とする。
同項同号の「同表の第三欄に掲げる方法によって得られた値を基準として同表の第四欄に掲げる誤差の許容内にある値」は、「表示値を基準として、同表の第三欄に掲げる方法によって得られた値が同表の第四欄に掲げる幅の範囲内にある値」とする。

(3)合理的な方法に基づく表示値の設定の導入と、表示値が誤差の許容範囲にあるか否かによる2種類の表示方法の導入について
意見:製造者や販売者が、設定根拠を示し、一定の管理のもと自己責任により、合理的な推定方法に基づき表示を実施することは賛成するが、このために異なる2種類の表示形式を導入するという手法は消費者また事業者にもその違いについて却って混乱を招き、導入すべきではない。
修正案:第3条6項第3号を次のように一部修正する。冒頭の「次に掲げる要件のすべてに該当する場合には」および、後段の要件一と二に掲げる文章を削除する。「推定により得られた値を記載する」を「公的データベースの利用、同一レシピサンプルの分析値の参照などの設定根拠を明示して、推定により得られた値を記載する」とする。

(4)低含有量の場合の栄養成分表示のあり方について
意見:栄養成分による健康管理では、相当量以上の摂取が健康に関係し、低含有量の成分に関しては一定量以下という表示がされれば正確な値の表示は必要でないと考えられるが、「〇(ゼロ)」というような表示は適切でなく、「一定量以下」という表示が適切である。さらに、加工食品に対し工業製品のような厳密な正確さを要求することには無理があり、平成24年度消費者庁「栄養成分の表示値設定方法調査」でも市販加工食品470品目の栄養成分(基本4成分と熱量)表示が表示値が+20%の誤差許容範囲に収まらない食品が半数以上あったとされ、細部にわたる厳密な規則の適用が実際上困難であることが知られている。健康影響の少ない低含有量食品に対する細部にわたる厳密な表示の要求による表示違反の頻発を回避するため、別表第二の第五欄に掲げる数値を見直す。
修正案:第3条6項第1号を次のように一部修正する。末尾の「同表第五欄に掲げる量に満たない場合は、〇とすることができる」は、「同表第五欄に掲げる量に満たない場合は、第五欄に掲げる量以下とすることができる」とする。
第3条6項第2号の「前号第四号の一定の値を〇とするものについては」は、「前号第四号の値を別表第二の第五欄に掲げる数値以下とするものについては」とする。別表第二の第四欄における「なお、」書き以下は、第一欄に掲げるすべての事項について削除する。別表第二の第五欄に掲げる数値は、第一欄に掲げる以下の栄養成分ごとに本パブリックコメントの末尾の表のように変更する。

(5)ナトリウムに替えて表示に食塩という用語の使用を認めることについて
意見:栄養成分のひとつとして栄養表示基準で規定されるナトリウムは、過剰摂取による高血圧や高塩分濃度と胃癌の関係などが指摘され、高塩分濃度の食事や食塩の一日摂取量の制限などの健康指導がされている。しかし表示でナトリウムとして数値が示されても多くの消費者にとり食塩への換算は容易でなく、食塩換算量の表示を推奨すべきであろう。
修正案:第3条4項の「ナトリウムの量」は「ナトリウムまたは食塩換算量」とする。別表第二の第一欄に掲げる「ナトリウム」は、「ナトリウムまたは食塩換算」とする。

(6)栄養成分の強調表示について
意見:栄養成分の強調表示については別途考えるべきであって、本提案は適用しない。

添付表:別表第二の第五欄に掲げる数値を、第一欄に掲げる以下の栄養成分ごとに次のように変更する。

たんぱく質については、一・〇g。脂質については一・〇g。飽和脂肪酸については〇・二g。コレステロールについては十mg。炭水化物については一・〇g。糖質については一・〇g。糖類については一・〇g。ナトリウムについては十mg。ナトリウムの食塩換算の場合については二十五mg。熱量については十kcal。