新たな食品安全のガバナンスの構築を目指して

食科協理事長  関澤 純

2013年あけましておめでとうございます。

一昨年は、東日本大震災と大津波、合わせて起きた福島原発事故という巨大災害があり、誰もが、自然の力と科学技術の功罪と、生きることの意味を問い直すことを迫られました。この1年間、食科協は、食品安全のさまざまな課題を取り上げ、会員と共に考え、その中からいくつかの提言もしてまいりました。昨年の活動の展開を振り返り、今年の課題について考えたいと思います。

食科協の新体制と活性化

昨年5月の総会では、これまでご尽力くださった池上幸江、石井健二、槇孝雄、三原翠、古川研一理事がご退任され、あらたに秋田 勝、伊藤澄夫、岩沼 幸一郎、小林幹子、佐仲登の5氏が理事にご就任されました。石井健二、槇孝雄の両氏は顧問として引き続き、ご助言をくださることになっています。専務理事は、森田邦雄氏から大神(東島)弘明氏にバトンタッチされました。また、毎月定例の常任理事会に加えて、運営委員会を別途あるいは同時に開催し、突っ込んだ議論と常任理事会の議題整理を行うようになりました。この運営委員会には、笈川和男、小暮実の両氏がご参加くださっています。このようにして、食科協の運営には、新任を含む多くの方のお力を結集し、活動を強化しています。具体的には、リスクコミュニケーション部会は新任の佐仲常任理事が部会長として、また新たに発足した食の安全施策調査部会では北村常任理事を中心として活動を展開しています。事務局を支える皆様の蔭の力も強化され感謝しています。

昨年1年間の活動の成果

 昨年食科協は、これまで以上に多角的に勉強会や公開シンポジウムの開催、外部への発信、意見表明に取り組みました。すなわち、3月には食品表示一元化検討会委員を迎えて「食品表示一元化論点整理を考える」公開勉強会、5月の会員研修シンポジウム「最近における食品安全行政の動向」に厚生労働省と消費者庁の担当者を迎えご講演頂き、8月は「GFSI(国際食品安全イニシアチブ)の動向について」のワークショップ、11月公開講演会「食の安全管理に関する国際動向と日本の課題について」に関連分野でご活躍中の講師をお招きして開催し、会員の皆様の活発なご討論を頂くとともに、多数のご意見やご要望を寄せて頂きました。

 また、消費者庁が進めている「新食品表示制度」の検討に関しては、前記勉強会だけでなく、同庁が開催した「新食品表示制度についての意見交換会(昨年11月)」「消費者団体とのワークショップ(同10月)」に参加し、意見陳述と討論を行い、パブリックコメント募集に応じて、食科協として意見表明を行いました。さらに今年2月には「新食品表示法(仮称)に関する勉強会」を新法案の国会上程に合わせて計画中です。

 これら勉強会などの開催にあたっては、一般財団法人日本科学技術連盟、財団法人日本冷凍食品検査協会に共催、あるいは後援して頂くとともに、ご好意で会場を提供して頂きました。外部団体との協力に関しては、消費者庁および福島市、広島消費者協会の食品放射性物質汚染に関わるリスクコミュニケーション会合、日本生協連のリスクコミュニケーション担当者会議、東京都生協連の「食の連続講座ークイズで学ぶ食の安全」に講師またアドバイザーとして協力しました。さらに、小生が昨年10月台湾のFDAに招待されて日本の食品安全リスクコミュニケーションの紹介を行うとともに、食科協の開発した食の安全ナビ検定クイズの利用などについて、コンサルタントとして公式に協力する約束ができました。また「電力事情悪化に対応した食品衛生管理」の提案は、千葉日報新聞や月刊「食と健康」にも取り上げられています。

 ニュースレターの発行では、活動報告、行政情報、消費者情報、海外食品安全情報の分担を明確にするとともに、会員からも興味深い情報を寄せていただき、さらに事務局では、ホームページの定期的な更新と読みやすさの改善を図りつつあります。

課題山積みの新年

 昨年会員と役員の皆様のお力で、一歩ずつ活動を展開してきた食科協ですが、われわれの眼前には多くの課題があります。昨年を通して、食品の放射性物質汚染による健康影響、生肉摂取による食中毒事故などへの一定の対応は図られ、前進してきましたが、新年早々に国会で議論される見通しの新食品表示法(仮称)が消費者、食品関連事業者、食品安全行政関係者の必要を反映したものになるのか?施行後5年を経た農薬等のポジティブリスト制度の検証、頻発するノロウイルスなどによる食中毒に対応する衛生管理など、消費者、事業者、行政の直面する課題は山積みです。

 有害微生物、食品汚染物質、放射性物質などの食品汚染リスクは、当然ながらそれぞれリスクの特性に応じた対応が必要です。健康面では、バランスのとれた食生活の推進が大切です。また現在、社会的には食品に限らない原子炉周辺の莫大な高濃度放射性物質の徹底封鎖と適切な除染処理により、環境汚染から生命と生活を守り、着実な復興を早期に達成してゆくことも大きな課題です。昨年の公開講演会でも提示されたように、私たちに今求められるのは、現実をよく見、聞いた上で、考え、省庁や専門領域の縄張りにとらわれる分断された対応でなく、情報を共有するだけのリスクコミュニケーションに留まらず、国際的な視野を持ち、問題の把握と解決策の提示、方針の選択と実施での適切な連携を重視する新たなリスクガバナンス構築の取り組みを、できるところから始めることではないでしょうか?

会員の皆様から、ご希望やご提案をいただき、さらなる活動の継続・発展を図るとともに会員の拡大にも取り組み、関連諸団体と連携を図り、情報面での食の安全への誤解を解きつつ、多くの方の参加を得て活動を広げてゆきたく考えています。