新食品表示制度についての意見
                              2012年11月22日

関澤 純 (NPO法人食品保健科学情報交流協議会理事長)

意見本文:
(1) 消費者庁サイト掲載の「一元化後の法体系」と「新食品表示制度のポイント」のイメージでは、詳細が必ずしも明確でなく、今回これに基づき意見を述べることにするが、新法案の具体的な内容が明確にされた時点で再度、パブリックコメントの募集をされることを要望する。

(2) 国民の生命と安全を守ることは政府の第一義的な責務のひとつであり、食品の表示では衛生上の危害発生の防止を最優先とし、このことを新法に明記すべきである。この目的に対応して、義務表示と任意表示を明確に分ける必要がある。また法律は一定の規制や制約を課すことから、制定前に規制への要望だけでなく、規制対象側の意見を聞く必要がある。

(3) 前記目的達成のためには、消費者向けはもちろんのこと、食品の安全確保に極めて重要な事故対策と予防に関わる業者間の基本情報伝達に必要な表示は義務化し、いずれも簡潔かつ明確で正確に伝えられるべきである。

(4) 消費者の表示への要望は多様にあるが、表示のみですべての要望に対応することはスペースと文字の大きさから限界がある。「法体系」と「ポイント」では、加工品原材料の原産地表示の拡大および、罰則規定の強化が挙げられている。主に製造・販売者側の商品の品質差別化による販売拡大と宣伝、また一部消費者の任意の選択に関わる情報である原材料の産地情報の表示は義務化せず、欧米各国のように任意とし、誇大、虚偽などで不適切とならないように、強調表示のルールなどを整備をする必要がある。なお優良誤認に関わる内容については「不当景品類および不当表示防止法」や健康食品については健康増進法の強化と対応も可能であろう。

(5) 最近でも、「生食用加工肉」についての表示という食品の安全確保に必要な業者の義務の不徹底と、加熱処理や保存料使用の意味に関する消費者への衛生教育が不十分なために、肉の生食や、「浅漬け」による食中毒で、子どもを含む多数の死者が発生している。また消費者庁は、原産地表示を義務化した際の監視機能を備えておらず、このことの監視も現在の食品衛生監視員の職務となるが、安全と関係のない産地偽装監視の強化は労力負担増となるだけでなく、安全確保の指導を手薄にし、また罰則強化による食べて安全な食品の回収と廃棄は明らかに貴重な食品の無駄になる。食品関連業者は原産地表示に関して、原材料供給地の天候異変による供給減少などにより輸入先を変更する必要は普段にあるが、表示の変更1件につき数万円を要すると言われ、100種類以上の多様な加工食品を扱う業者にとっては大きなコストの負担を生じる。もしこれを価格に反映させるならば食品の様に安価な商品では、過剰な表示への要求が消費者の相当な負担増を招くことになる。
任意表示であっても適正かつ公正に表示されることは必要だが、産地やブランドにより価格が大きく異なるため表示偽装の潜在要因となり、実際には日本の事業者が現地で指導し収穫する食品では、品質または安全性に大きな差がない場合に、産地や輸出国の食品に対する国民の差別意識を助長する原因になっている。

(6) 食品安全に必要な情報は、表示のみで目的は達成できず、表示以上に消費者の食品購買と選択の手がかりとされるチラシやネット上の広告や宣伝の適切さと、これを受け取る消費者の適切な選択を支援する教育が重要である。消費者庁が有効性や安全性を認める保健機能食品以外の「いわゆる健康食品」などで、誇大あるいは虚偽の情報や、「無添加」表示など誤解を招く情報に起因するとも思われる死亡や疾病も相当数報告され、宣伝広告における事業者の適切な情報提供の指導強化と、それらを利用する消費者への食品情報の適切な理解を推進する教育を充実させることが消費者庁に求められる。食品安全基本法でも謳われているように、食品安全のリスクコミュニケーションは、生産者、食品事業者、消費者、行政、専門家の適切な協力により、始めて効果的に実現できると考える。