新食品表示法(仮称)に関する消費者団体とのワークショップにおける意見陳述 
               食科協理事長  関澤 純 2012年10月24日

公開性の要望

1. 今回のワークショップ開催の労に感謝するとともに、食品表示一元化検討会の報告書および新食品表示法(仮称)に関わるパブリックコメントの募集や公開の意見交換会などの機会を設けて、広く関係者の意見を聞いていただくことを要望する。今回のワークショップは限られた一部の消費者団体を対象とし急遽開催されたが、今後は開催日程を周知し、傍聴も可能とする方式で開催し、開かれた消費者庁であることを求める。

表示のみならず消費者への多様な情報提供手段と消費者教育の活用

2. そもそも国民への食品に関わる情報提供手段は表示のみに限られず、現在の食品衛生法、JAS法、健康増進法のうち、表示部分のみを別途に規制することになる新法を制定することは、却って複雑化が生じる恐れが懸念される。消費者が食品に関する情報を取得する手段としては、大量の広告宣伝があり、この中には誇大な宣伝、消費者に誤解を生じさせるものもあり、消費者庁としてはむしろこの内容について監視して、誇大あるいは虚偽情報については修正、除去を求めることも重要であろう。消費者庁が有効性や安全性を認める保健機能食品以外の「いわゆる健康食品」などでは、虚偽情報や誤解に基づく死亡や疾病事故も相当数報告されていることから、適切な情報提供と消費者教育を充実させることも消費者庁に求められる。

食品表示は生命と食の安全を守ることを第一義に

3. 国民の生命と安全を守ることは政府の第一義的な責務のひとつである。食品表示においては、衛生上の危害の発生の防止及び国民の健康の増進を図るため、義務的な表示は、消費者向けはもちろんのこと、食品の安全確保に極めて重要な業者間の基本情報の伝達を担保する上で必要な情報に絞り、簡潔かつ明確にすべきである。食品表示は限られたスペースに必要な情報を確実に掲載することが求められ、食品の安全確保に関わる情報は明確に伝わるように掲載すべきである。すなわち法で強制される義務的表示は、全食品に、品名、内容量、製造者と連絡先、保存方法、期限表示、アレルゲンの有無を、加工食品の場合は主な原材料、栄養表示では摂取量の制限が推奨されるナトリウムと脂肪含量などで十分と考える。その他には、事故・事件発生時の責任と連絡先、並びにリコール・回収の目安となるロット記号・番号等の記載が明確となれば良い。表示の不適切やその怠慢が大きな要因と考えられる生肉などの摂取による食中毒事故が最近に発生したが、このような状況は直ちに改善されねばならない。「浅漬け」の事故では、原材料の取り扱いや業者間における情報伝達の不徹底もあり、真の原因の究明が困難となり、事故再発予防に障害が見られている。

一元化は用語の定義統一などにより整合性と理解のし易さを主に

4.基本的に現在考えられている3法は目的が異なり、表示のみを一元化するのは元来無理がある。食品表示の一元化が、誰にどのようなメリットまたデメリットをもたらす可能性があるかにつき、関係者の意見を聞き、できる限り明確にし、各法間で整合性と理解しやすさを中心に一元化するのは、製造者などの記載の定義や用語の統一にとどめることで十分であろう。

消費者の多様な要求には任意表示で対応し、誇大・虚偽宣伝の監視を中心に

5. 食品に期待する内容は、立場や考え方によりさまざまであるが、すべての要求を表示の中だけに求めるのは、表示スペースや細かい文字の読み取り能力からも、限界がある。主に製造・販売者側の商品差別化の宣伝、また消費者の任意の選択に関わる情報である品質、産地などは義務表示とせず、欧米各国のように任意とすべきであり、誇大、虚偽などで不適切とならないように、強調表示などのルールを決めておけば良い。輸入食材や調理済み食品が増え、産地やブランドにより価格が大きく異なるため、産地やブランド表示が偽装の潜在要因となっているが、実際には日本の事業者が現地で指導し収穫する産品など、品質また安全性に差がなくても、産地や輸出国の食品に対する国民の差別意識や不要な経済的打撃を助長する原因になっている。任意表示であっても、適正かつ公正に表示されることは必要だが、輸入原材料が混入することで産地偽装として回収・廃棄され、かつ表示に対する消費者の大きな不信のもとになっている。食品の安全性に関係のないような産地偽装による回収と廃棄は無駄であり、食品を大切にする「食育」の精神に背反している。

関係者間の相互理解と信頼の構築し無駄をなくす

6. 期限表示の適切な理解がないために、食べて安全な食品を無駄に廃棄することが広く行われているが、このことのみならず表示内容について、生産、加工、流通業者、消費者を対象とした幅広い教育を充実させ、表示の趣旨を生かすようにすべきである。リスクコミュニケーションは、リスクの削減と予防のために関係者間での適切な情報と意見の交換により初めて達成できるものなので、関係者間の協力と信頼関係を強化することを目指すべきであろう。

知る権利を適切で合理的な選択に生かせるよう食品安全の適切な理解の推進と海外に学ぶこと

7. 国が安全性を保証し、使用基準に従い使用される食品添加物について詳細な記載を義務付けることは、巷にあふれる「無添加」という不適切な宣伝の道具となっている。たとえば保存料の代わりにナトリウム濃度を高めることは高血圧の原因となりえ、逆に塩分濃度を下げた場合に「浅漬け」による食中毒が発生し、非衛生な食品の安全性誤認の原因となる。添加物のうち、キャリーオーバーや加工助剤は欧米同様に記載不要とし、記載は比較的多量(たとえば含有量1%以上)の場合や保存性(すなわち安全性)を担保する手段を示す保存料などに限ることも検討されるべきである。多くの消費者にとり詳細な理解が困難であったり、知ることによる利益を特別に見いだせない多くの品目については、欧州連合のように記号で置き換え、インターネットなどで調べることでどうしても知りたい場合への対応を図り、また業者間の情報伝達の手段とすべきではないか。

未解決の問題はさらに良く検討を

8. この度の一元化検討会で十分詰め切れず、中間整理では併記されていた事項は今後さらに検討を加えて、改善の目的と実施法が明確にされた時点であらためて追加修正をしたり、あるいは現行を維持することが良いと考える。